産後は一人で頑張らない

産後の心とからだ

頼ることも、お母さんを守る大切な力

産後、赤ちゃんのお世話が始まると、毎日の中心は赤ちゃんになります。

授乳、おむつ替え、抱っこ、寝かしつけ。

そのうえ家事まで今まで通りにこなそうとすると、お母さんの休む時間はどんどん少なくなってしまいます。

私自身、産後を振り返って、

「あのとき、もっと人に頼ればよかった」

と思うことがあります。

今回は、助産師として、そして一人の母親として経験したことから、産後に「頼る」ということについて考えてみたいと思います。

帝王切開後も、家事をやめられなかった私

私は帝王切開で出産しました。

産後はまだ傷が痛み、前かがみになると、お腹が引きつるような感覚がありました。

それでも私は、家のことを今までと同じようにやろうとしていました。

もともと、部屋が整っていることが好きだったからです。

夫は毎日、赤ちゃんをお風呂に入れてくれていました。

そのあと私は浴室に入り、掃除をしていました。

前かがみになると傷が痛む。

それでも「やっておかなければ」とスポンジを握り、涙が出たことがあります。

今なら、あの頃の自分に言えます。

「今日のお風呂掃除はしなくていいよ」

浴室の掃除は、明日でもできます。

あのときの私に必要だったのは、もう少し頑張ることではなく、体を休ませることでした。

「自分でやった方が早い」が負担になることも

産後は、誰かにお願いすること自体を負担に感じることがあります。

「説明するくらいなら、自分でやった方が早い」

「仕事で疲れているから頼みにくい」

「これくらいは自分でやらなくちゃ」

私自身にも、そんな気持ちがありました。

でも、すべてを一人で抱える必要はありません。

大切なのは、「手伝って」と漠然とお願いするだけではなく、何をしてほしいのか具体的に伝えることです。

たとえば、

「夕食後の食器をお願いしたい」
「今日はお風呂掃除をお願いしたい」
「30分だけ赤ちゃんを見ていてほしい」
「買い物をお願いしたい」

このように具体的にすると、相手にも伝わりやすくなります。

家事を完璧に分担することが目的ではありません。

お母さんが休める時間をつくること。

それが大切です。

家族以外を頼ってもいい

頼る相手は、家族だけではありません。

実家が遠い。
親が高齢で頼れない。
パートナーの帰宅が遅い。

家庭によって状況はそれぞれ違います。

そんなときは、助産師や保健師、自治体の子育て支援など、家の外にいる人を頼る方法もあります。

私自身、実家が遠く、母も高齢だったため、

「自分で頑張るしかない」

と思っていた時期がありました。

だからこそ今、お母さんたちには、家庭の中だけで何とかしようとしなくてもいい、と伝えたいと思っています。

「産後ケア事業」という選択肢もあります

現在、市区町村では産後ケア事業が行われています。

産後のお母さんが休息をとったり、授乳や育児について相談したり、必要なケアを受けたりするための支援です。

こども家庭庁の「産後ケア事業ガイドライン」では、産後ケア事業について出産後1年以内という枠組みが示されています。

ただし、ここで大切なのは、「1歳になるまで、どの施設でも同じように利用できる」という意味ではないということです。

産後ケア事業の実施主体は市区町村です。

そのため、

  • 利用できる赤ちゃんの月齢
  • 宿泊型・通所型・訪問型などの利用方法
  • 利用できる回数
  • 利用料金
  • 申し込み方法
  • 実施している施設

などは、自治体によって異なります。

また、同じ自治体の産後ケア事業であっても、利用する施設によって受け入れ可能な月齢が違うことがあります。

たとえば宿泊型では、

「生後4か月未満まで」

「生後6か月未満まで」

などと自治体が対象時期を定めていることがあります。

さらに、実際の医療機関や助産所では、施設の体制などによって、

「生後1か月未満」

「生後2か月未満」

「生後3か月未満」

など、さらに受け入れ月齢が限られている場合もあります。

一方で、日帰り型や訪問型では、宿泊型より長い月齢まで利用できる自治体もあります。

そのため、産後ケアを利用したいと思ったら、

「国の制度では1年以内だから大丈夫」と考えるのではなく、お住まいの自治体と、実際に利用したい施設の両方を確認することが大切です。

お住まいの市区町村のホームページで、

「〇〇市 産後ケア」

と検索してみてください。

さらに、宿泊を希望している場合には、

「何か月まで宿泊型を利用できるのか」

も早めに確認しておくと安心です。

妊娠中から申し込みや事前登録ができる自治体もありますので、出産前に一度調べておくのもおすすめです。

「まだ限界というほどではないから」

と遠慮する必要はありません。

疲れがたまりきってしまう前に、どんな支援があるのかを知っておく。

それも、産後の自分を守るための大切な準備だと思います。

「頼ること」を産後の準備に入れておく

赤ちゃんを迎える準備というと、ベビー服やおむつ、赤ちゃん用品などを思い浮かべるかもしれません。

でも、私はもう一つ準備してほしいものがあります。

「困ったときに誰を頼るか」を考えておくことです。

家事をお願いできる人はいるか。
買い物を頼める人はいるか。
授乳で困ったときはどこへ相談するか。
地域にはどんな産後ケアがあるか。

赤ちゃんが生まれてから慌てて探すより、あらかじめいくつか候補を持っておくと安心です。

頼ることも、自分と赤ちゃんを守る方法

私は産後、

「全部、自分でやらなければ」

と思っていました。

けれど今振り返ると、必要だったのは、さらに頑張ることではありませんでした。

「これはお願いしよう」と決めることでした。

頼ることは、育児を誰かに任せきりにすることではありません。

自分の体を休ませながら、赤ちゃんとの新しい生活を続けていくための方法の一つです。

今日もし、

「ちょっと疲れているな」

と感じていたら、

今、自分以外の誰かにお願いできることはないかな?

と、一つだけ考えてみてください。

それが、産後の自分を守る小さな一歩になるかもしれません。

花ことり

参考

こども家庭庁「産前・産後サポート事業及び産後ケア事業ガイドライン(令和8年3月)」
※産後ケア事業の対象月齢・利用方法・料金・回数等は自治体および実施施設によって異なります。最新情報は、お住まいの市区町村および各実施施設でご確認ください。

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