授乳をしているとき、ふと気づくと肩に力が入っている。
赤ちゃんがうまく吸えているか気になって、顔をのぞき込んでいる。
乳首に痛みがあると、赤ちゃんが吸いつく瞬間に、思わず息を止めている。
そんなことはありませんか。
産後は、授乳や抱っこ、おむつ替えなど、前かがみになる時間が増えます。
さらに、赤ちゃんのお世話に集中していると、自分の体が緊張していることに気づかないこともあります。
今回は、忙しい産後の生活の中でも取り入れやすい、「自分の呼吸に気づく」という小さなセルフケアについてお話しします。
授乳中、肩に力が入っていませんか?
産後すぐの授乳は、お母さんも赤ちゃんも慣れていく途中です。
「ちゃんと飲めているかな」
「深くくわえられているかな」
と、赤ちゃんのお口を一生懸命見ているうちに、首が前に出たり、肩をすくめたりすることがあります。
乳首に傷や痛みがある場合には、赤ちゃんが吸い始める瞬間に、体全体へ力が入ることもあります。
助産師として授乳のお手伝いをしていると、
「今、息を止めていましたね。少し息を吐いてみましょう」
とお声がけすることがありました。
すると、
「本当だ。息を止めていました」
と、初めて気づくお母さんもいます。
まずは、自分の体に力が入っていることに気づく。
それだけで十分です。
呼吸は「自分に気づくきっかけ」に
忙しい育児の中で、まとまったセルフケアの時間をつくるのは簡単ではありません。
そんなとき、呼吸は特別な道具を必要とせず、その場で意識することができます。
無理にたくさん息を吸おうとする必要はありません。
心地よい範囲で息を吸い、ゆっくり吐いてみます。
大切なのは、
「深呼吸をすれば、疲れやつらさが全部楽になる」
と考えることではありません。
少し肩の力を抜いて、
「今、私は力が入っているな」
と、自分の状態に気づくためのきっかけとして使う。
そのくらいでいいと思います。
授乳中にもできる、30秒のセルフケア
難しい方法は必要ありません。
赤ちゃんの姿勢が落ち着いたら、まず自分の肩を確認してみます。
肩が上がっていたら、少し下ろす。
そして、
鼻から無理なく息を吸い、ゆっくり吐く。
これを、心地よい範囲で数回。
「たくさん吸わなくちゃ」
「上手に呼吸しなくちゃ」
と頑張る必要はありません。
この30秒は、特別な呼吸法を行う時間というより、自分の緊張に気づくための小さな時間です。
授乳のたびに必ず行う必要もありません。
「あ、また力が入っているな」と気づいたときに、一度ゆっくり息を吐く。
それだけでもいいのです。
※呼吸によって息苦しさやめまい、不快感が出る場合には無理に続けないでください。
呼吸と一緒に、授乳姿勢も見直してみる
何度呼吸を意識しても、授乳のたびに首や肩がつらい場合には、呼吸だけではなく、姿勢そのものも確認してみましょう。
赤ちゃんに合わせて、お母さんが大きく前かがみになるのではなく、クッションなどを利用して、赤ちゃんをお母さんの方へ近づけます。
背中や腕を支えられる場所をつくることも大切です。
また、授乳のたびに強い乳頭痛がある場合には、
「痛いけれど、呼吸で我慢しよう」
とする必要はありません。
赤ちゃんのくわえ方や授乳姿勢などを見直した方がよい場合があります。
痛みが続くときには、助産師や母乳外来などへ相談してください。
肩こりや疲れを、呼吸だけで解決しなくていい
産後は、赤ちゃんのお世話によって睡眠が細切れになり、疲れがたまりやすい時期です。
夜間の授乳によって睡眠不足になることもあります。
そのため、首や肩がつらいときには、
休めるときに休む。
姿勢を変える。
誰かに赤ちゃんを抱っこしてもらう。
授乳する場所やクッションを工夫する。
といったことも一緒に考えてみてください。
呼吸を意識することは、産後の疲労そのものを解決するものではありません。
いくつかあるセルフケアの一つです。
「息苦しい」と感じるときは、セルフケアだけで済ませないで
ここでお伝えしているのは、授乳中などに無意識に息を止めていたり、体に力が入っていたりするときのセルフケアです。
一方で、
- 本当に息が苦しい
- 深く息を吸えない感じが続く
- 胸が痛い、圧迫される感じがある
- 動悸が強い
- めまいや失神しそうな感じがある
- 横になると息苦しい
などの症状がある場合には、
「疲れているだけ」「緊張しているだけ」と自己判断せず、医療機関へ相談してください。
産後には、セルフケアではなく医療的な確認が必要な症状が起こることもあります。
今日の30秒、自分の呼吸に気づいてみる
赤ちゃんのお世話をしていると、お母さん自身の体のことは後回しになりがちです。
だから今日は、
「深呼吸をしなくちゃ」
ではなく、
「今、私はどんな呼吸をしているかな」
と、一度だけ気づいてみてください。
肩に力が入っていたら、少し抜く。
息を止めていたら、ゆっくり吐いてみる。
それだけで構いません。
産後のセルフケアは、毎日きちんとこなす課題ではありません。
自分の疲れや緊張に気づくための、小さな習慣として取り入れてみてください。
花ことり
参考
NHS「Breathing exercises for stress」
厚生労働省「妊娠・出産・産後の不調」
CDC「Urgent Maternal Warning Signs and Symptoms」



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